厚木市恵心病院編 [page3]



 部屋の中は、何者かに消火器を撒かれたらしく、白い粉が散乱していて、粉っぽいです。

 床は深緑の単色で塗られているので、どうやらそれが部屋全体を暗いイメージにしているようです。

 しかし、この暗い雰囲気はそれだけでは無いと思うのですが・・

 白い布の帯が天井の縁から壁を伝い、床まで続いています。

いったい何なんでしょうか?


 何かと思い近づいて良く見てみると、それは葬儀の際祭壇の上に飾られている幕に良く似ています。

 「なぜ、そんな幕が病院内に飾って有るのでしょうか・・・」

 などと考えている暇もなく、青ざめていく自分が分かります。

 「霊安室・・・・」

 どうやら私はいつの間にか禁断の場所に足を踏み入れていたようです。



 この部屋に入った時は確かに薄気味悪さを感じましたが、まさか霊安室だとは思いませんでした。

 どうやら「霊安室は地下室に有る」というのは噂だけだったようです。

 しかし霊安室だと知ってしまうと、にわかに恐怖が込み上げてきます。

 あまりの唐突さに身構える暇も無く霊安室に入ってしまった私は、少しパニック状態で上手く頭の整理が出来ません。

 「怖い怖い怖い」あまりの怖さに頭の中は「怖い」の一色です。

 「逃げ出してしまおうか・・」とも思いましたが、恐怖で逃げ出すと、もう後戻りは絶対不可能なので、何とか気力で留まり取材を続けます。

 壁にエアコンの設置跡が残っていますが、これで御遺体を冷やしていたのでしょうか?

 天井には死臭を取り去る為だと思われる換気扇が設置されている事から、この真下に御遺体を安置していたのでしょう。
 


 エアコンが設置されていたと思われる跡の真上の壁紙が剥がれ、その部分が黒くカビたような染みになっているのが不気味です。

 その部分を拡大してみると、その染み一つ一つが顔に見えてきます。

 不幸にも病気や事故などで亡くなられた方達が、こうした形で現れているのでしょうか?


 部屋の片隅には段がついた木箱が置かれていますが、これは嘗て祭壇として使われていたのでしょう。

 祭壇の上には消火器の粉が雪のように白く積もり、落書きまでされています。

 しかし、仏様を祭る為の葬具を汚したり落書きする人の、神経を疑ってしまいます。

 人として、やっていい事と悪い事の区別もつかないのでしょうか?


 祭壇脇の床に、菊の花が落ちていました。

 本物の生花と思い“ギョッ”としましたが、どうやら造花のようです。

 故人の冥福を祈る為に飾られて菊の花も、今となっては廃墟の一部とし化してしまっています。


 霊安室の壁に窓を発見しました。

 窓ガラスは黒く着色されており隣の部屋の様子を伺う事が出来ないようになっていました。

 この窓は多分、隣の部屋から霊安室の様子を伺う為の窓だったのでしょう。

 霊安室に留まるのも、そろそろ限界を感じてきたので、そろそろ出る事にします。


 1階部分の一応の探索を終えた私は、今度は2階部分に向うため階段を上がりましたが、2階部分の入り口扉は閉められ、溶接までされています。

 これでは中に入る事が出来ません。

 仕方が無いので更に上の3階に上がると、何故かそこは閉められている様子も無く簡単に入る事が出来ました。


 廊下部分には洒落た出窓が施されています。

 窓には落書きがある事からガラスが割られていないように見えますが、落書きは窓のフレーム部分に書かれているので、うかつに近づくと転落する恐れが有りとても危険です。


 3階部分も天井から壁までかなり破壊されています。

 どうやら3階部分も相当荒らされているようです。


 ここは何の部屋でしょうか?

 何の変哲も無い普通の部屋のように見えますが、入った途端霊安室にも引けをとらないくらいの霊気を感じます。

 写真にも白いモヤが写っていますが、この部屋で亡くなられた患者さんの霊なのでしょうか?
 


 3階部分に外に出られる場所を発見したので、ここで少し休憩する事にします。

 薄く積もった新雪の上には、探索者のものと思われる足跡が残されています。
 
 多分私が訪れる前に探索に訪れた人の足跡なのでしょう。

 これだけ巨大な廃病院だと探索者も多く訪れて当然ですが、今のところ私は誰一人として遭遇していません。

 寒さの為、夜探索をしているのは私だけかもしれませんが、私としてはその方が好都合です。


 この部屋は心電図などの機器が設置されているので検査室だと思いますが、もしかしたらリカバリー室なのかもしれません。


 3階部分をくなまく探索していくと、大病院らしく至る所に階段も設置されています。

 何箇所かは溶接により鉄の扉が封印されており他階に行く事が出来なくなっていましたが、慎重に調べて行くと2階部分に通じる階段を発見する事が出来ました。

 早速2階部分を調べに行く事にしましょう。


 2階には手術室が有ると噂されていますから、まずそれを探す事にしましょう。

 タイルで囲まれた部屋を発見しました。

 問題の手術室でしょうか?

 しかし手術室にしては大型の無影灯が見当たらないので手術室では無さそうです。

 床はコンクリートで出来ており、何かを流すには丁度良い具合です。

 その時はあまり気にはなりませんでしたが、後でよくよく考えてみると病理解剖室だったのかもしれませんが、あくまでも推測です。


 学校の化学室に似たこの部屋は実験室なのでしょうか?

 大型の机の上にはステンレスの板が敷かれ何らかの実験か実習が行なわれていたと思われますが、実際何に使用されていたのかが分からないのが気になって仕方有りませんでした。


 更に廊下を進んで行くと明らかに他の場所とは違う雰囲気が漂っています。

 どうやらこの奥に問題の手術室が存在しているようです。

 期待と不安を胸に秘め、私は手術室に向かう事にしました。

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